「株は放置が一番」と言われることがありますが、本当にそうなのでしょうか?
短期的な値動きに左右されず、長期保有による資産形成を目指す「放置投資」は、初心者から経験者まで人気のある投資戦略。
しかし、放置を成功させるには、最低限の注意点を理解しておくことが必要です。
本記事では、株を放置する上でのリスク管理やメリット、放置が向いている人と向いていない人の違いについて詳しく解説します。
また、「放置して損失が出たらどうする?」「初心者が始める最適な投資金額は?」といったよくある疑問にもお答えします。放置投資をより効果的に実践したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
株は本当に「放置」が一番なのか?
株式投資で「放置」という戦略が注目されるのは、長期保有による利益の可能性が支持されているからです。
しかし、「放置」がすべての状況で最適とは限りません。株式市場は動的であり、経済や個別銘柄の状況が変化するため、完全な無関心はリスクを伴います。
本当に「放置」が最善なのかを考えるには、投資の目的、リスク許容度、ポートフォリオのバランスを見直す必要があります。そのためにも、以下2点を抑えておきましょう。
- 「放置」と「放置しすぎ」の違い
- 放置が生まれる背景について
「放置」と「放置しすぎ」の違い
「放置」は、短期的な市場の動きに影響されず、資産を長期的に育てる意図的な戦略を指します。一方で「放置しすぎ」は、必要な調整を怠り、ポートフォリオの偏りや市場の変化を放置してしまう状況を指します。悪く言うなら思考停止であり、サボりとも言えるでしょう。
例えば、特定のジャンルや銘柄に偏りすぎた場合、リスクが増加し、パフォーマンスが低下する可能性があります。なぜなら、銘柄を分散していないのでリスクを受けやすいからです。
「放置」は無関心ではなく、定期的なチェックや必要なリバランスを含む「意識的な放置」であるべきです。これにより、長期的な成長と安定性を両立させることができます。
放置が生まれる背景について
株式投資における「放置」の有効性は、データと心理学的要因によって裏付けられています。過去の市場データは、長期的な運用が短期売買よりも安定的なリターンを生む可能性が高いことを示しています。
例えば、ニッセイ基礎研究所の分析によると、積立投資で最終直残高で元本割れケースの場合では、投資期間10年と20年では以下のような差があります。
投資対象 | 投資期間10年 | 投資期間20年 |
国内債券型 | 8.3% | 0.0% |
外国債券型 | 2.7% | 0.0% |
国内株式型 | 35.7% | 22.8% |
外国株式型 | 11.0% | 0.0% |
米国株式型 | 13.0% | 0.0% |
投資期間10年では、すべての投資対象(国内債券型、外国債券型、国内株式型、外国株式型、米国株式型)で元本割れするケースがありましたが、投資期間20年では、国内株式型を除いて元本割れするケースはなくなりました。
ただし、上記はあくまで長期投資の有用性を示すものであり、特定の銘柄について言及しているわけではありません。そのため、銘柄によっては長期保有していても元本割れのリスクは大いにあることを忘れないでおきましょう。
また、人間は損失を避けたい心理(損失回避バイアス)が強く、頻繁な取引は心理的負担を増幅します。「放置」は、このストレスを軽減し、感情的な判断を抑える助けとなるのです。
しかし、経済の大きな転換点やポートフォリオの偏りを無視すると、将来的な損失につながるリスクがあります。バランスを保ちながら、戦略的に「放置」することが鍵となるでしょう。
株の放置がもたらす3つのメリット
株を放置する投資方法には、多くのメリットがあります。特に、長期運用ならではの複利効果や、株価の変動に振り回されない精神的な安定、そして貴重な時間を有効活用できる点が挙げられます。
以下で、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
- 長期運用がもたらす複利の効果があるから
- 株価の値動きに一喜一憂しなくていいから
- 時間の有効活用ができるから
長期運用がもたらす複利の効果があるから
株式投資において複利効果は、資産形成の最大の武器です。
複利とは、運用利益を再投資することで元本が拡大し、それに応じた利益がさらに生まれる仕組みのこと。時間とともに大きくなり、長期保有を通じて最大化されます。「投資は長期が前提」と言われるのは、複利の効果があるからなんですね。
たとえば、年間リターンが平均5%であれば、20年後には元本が約2.65倍になる計算です。この恩恵を受けるためには、短期的な市場の変動に惑わされず、着実に保有し続ける忍耐力が必要になるでしょう。
株価の値動きに一喜一憂しなくていいから
株式市場は短期的な変動が激しく、頻繁に株価をチェックすることは心理的なストレスを引き起こします。株式投資はパソコンに張り付いているイメージがありましたが、放置投資を知ってから、僕にとっては非常にありがたいです。
「放置」の最大のメリットは、こういったノイズから解放されることにあります。日々の値動きに感情的な反応をすることが減り、冷静かつ合理的な投資判断が可能となるでしょう。
特に、忙しい生活の中で心の平穏を保ちながら資産を運用する方法として、「放置」は大いに役立つ戦略です。僕らの人生は投資だけではありません。むしろ投資以外にもっと時間を使うべきと思います。
自分のやりたいことや大切な友人、家族のために豊かな時間を費やすことができる投資手法なのではないでしょうか。
時間の有効活用ができるから
投資を「放置」することで、頻繁な取引や情報収集に費やす時間を削減し、他の有意義な活動に時間を振り分けることができます。例えば、自己成長のための学習やキャリアアップ、家族との時間を充実させることが可能です。
また、株価の変動を気にしないことで得られる精神的な余裕は、人生全体の満足度向上にも寄与します。投資だけでなく、自分自身や家族との時間を大切にする選択として、「放置」は効率的で理にかなった方法です。
「仕事が忙しいけれど、放置で株を持っておきたい」といった方にはいいかもしれません。もちろん、適当に投資をするのはNGですが。
株を放置する上での注意点
株を放置することは長期投資の有効な戦略ですが、以下の注意点を押さえる必要があります。
- 市場と業績の変化に注意する
- 信用取引での放置は避ける
- 半年に1回はチェックする
まず、放置を「完全な無視」と勘違いしないことが重要です。適切にリスクを管理しながら、必要なタイミングで見直しを行うことで、資産の安全性を確保できます。
市場と業績の変化に注意する
株式市場や保有銘柄の業績は、常に変化します。特に、経済情勢や業界のトレンドが大きく動く局面では、株価が大きく変動する可能性があります。
例えば、主要な取引先の倒産や新たな規制が業績に影響を及ぼすことがあります。放置する場合でも、ニュースや市場動向には目を向けて、必要であればポートフォリオを調整することが重要です。
長期投資を成功させるためには、適切なリスク管理が欠かせません。
信用取引での放置は避ける
信用取引での放置は、大きな損失を招くリスクがあります。信用取引では、元本以上の取引が可能な一方で、価格変動によるリスクも高まります。
放置している間に担保不足が発生し、強制的にポジションを解消される場合もあります。このようなリスクを回避するためには、信用取引を利用する際には積極的な管理が必要です。
放置が前提の投資には、現物取引を選ぶことをおすすめします。
半年に1回はチェックする
放置投資を実行する際でも、最低限のチェックを行うことが成功のカギです。
半年に1回程度、保有銘柄の業績や市場の状況を確認する習慣を持つとよいでしょう。このタイミングで、ポートフォリオの偏りやリスクが過度に集中していないかを見直すことができます。
定期的なチェックは、リスクを抑えながら長期的な資産形成を進めるための重要なステップです。
株の放置投資に向いている人と向いていない人の違い
株の放置投資に向いている人と向いていない人にははっきりとした違いがあります。
株の放置投資に向いている人は、以下の特徴がある方です。
- 忙しい人や投資に時間を割けない人
- 金融知識が少ない人や投資初心者
- 長期的な視点を持てる人
投資信託や個別株の積立を自動設定しておけば、自分が忙しいときでも株の購入ができるので、とても楽ですよね。
一方で、株の放置投資に向いていない人は、以下の通りです。
- 短期的な利益を求める人
- 頻繁に取引したい人
- リスク許容度が低い人
そもそも投資とは、15年、20年を前提にして行うもの。短期的な利益を求める人には向いていません。また、長期間投資を行うため長期的に投資用の資金が拘束されます。投資用の資金が使えなくても問題ない方はいいですが、困る方はあまりおすすめしません。
株の放置に疑問を持つ方からのよくある質問
最後に株の放置に対する疑問を持つ方からのよくある質問をまとめました。
- 放置して損失が出たらどうすればいい?
- 放置中にリバランスを忘れても大丈夫?
- 初心者が始めるときの最適な投資金額は?
放置して損失が出たらどうすればいい?
放置中に株価が下落し損失が出た場合、まずは慌てずに状況を冷静に分析することが重要です。
株価が下落する理由には、全体の市場の低迷や業績悪化などがあります。業績が健全な企業の場合、短期的な下落は一時的なものと考えられるため、売却を急ぐ必要はありません。
しかし、企業の基盤が弱く将来性が乏しいと判断した場合は、損切りを検討することも必要です。感情的な判断を避け、データに基づいた行動を心がけましょう。
放置中にリバランスを忘れても大丈夫?
リバランスを行わずに放置しすぎると、ポートフォリオが特定のセクターや銘柄に偏り、リスクが増大することがあります。理想的には、年に1回程度のリバランスを行い、資産配分を適切に保つべきです。
ただし、長期投資では短期的な偏りが即座に問題になるわけではありません。大切なのは、定期的に資産全体を見直す習慣を持ち、適切なタイミングで調整することです。忘れてしまった場合は、気付いたタイミングで見直しを行えば遅くはありません。
初心者が始めるときの最適な投資金額は?
初心者が投資を始める際は、生活費や緊急資金を確保した上で、余裕のある範囲の資金を投じることが重要です。具体的には、月収の10〜20%程度や、余剰資金の中からリスクを取れる範囲の金額を検討すると良いでしょう。
また、最初から多額の資金を投入せず、小額から始めて経験を積むことで、リスクを抑えながら投資の知識を深めることができます。最適な投資金額は、収入、生活費、リスク許容度に応じて異なるため、自分に合った金額を設定しましょう。
実際は、100円から投資をすることが可能です。詳しくは下記の記事も参考にしてみてください。
まとめ
株を「放置」することは、長期的な視点で資産形成を行う有効な方法です。
しかし、放置投資は「完全に無関心」で良いわけではありません。市場や業績の変化に注意を払い、半年に一度はポートフォリオを見直すなど、基本的なリスク管理が必要です。
また、信用取引では放置がリスクを増幅させるため避けるべきです。本記事では、「放置投資が向いている人と向いていない人の特徴」や「放置に関するよくある質問」にもお答えしました。
投資を始める際は、自分の性格や資金状況に合わせた方法を選び、適切に放置を活用することが成功への第一歩です。