「株は放置が一番」と言われることがありますが、本当にそうなのでしょうか?
短期的な値動きに左右されず、長期保有による資産形成を目指す「放置投資」は、初心者から経験者まで人気のある投資戦略。
しかし、放置を成功させるには、最低限の注意点を理解しておくことが必要です。
本記事では、株を放置する上でのリスク管理やメリットついて詳しく解説します。
また、「放置して損失が出たらどうする?」「初心者が始める最適な投資金額は?」といったよくある疑問にもお答えします。
放置投資をより効果的に実践したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
株は放置が一番正解なの?
結論、株を放置してよいかどうかは「運用スタイル」に左右されます。
たとえば、長期投資を前提とする場合は、多少の市場変動があっても落ち着いて保有し続けることが利益を生みやすいです。
特に優良企業への長期投資であれば、頻繁に値動きを追いかけるよりも、配当を再投資してじっくり複利の効果を狙った方が、安定した資産形成につながることが多いでしょう。

しかし、短期的に利益を得たい場合は話が別です。
株価は毎日のように動くため、買った後に放置するのではなく、市場の動きをこまめに確認し、状況に応じて売買を行う必要があります。
さらに、相場全体の急な変動や世界情勢の変化など、状況によっては放置することでむしろリスクが増えてしまうこともあるでしょう。
そのため、投資を始める際は、
- 自分自身がどの程度の期間で投資を考えているのか
- またどの程度リスクを許容できるのか
を明確にすることが大切です。
その上で、「ほったらかし」なのか、「状況に応じた柔軟な対応」を取るのかを見極めていきましょう。
ただし、「株の塩漬け」には要注意
株を放置する場合に気をつけたいのが、いわゆる「塩漬け」という状況です。
塩漬けとは、購入した株が値下がりし、売るに売れなくなってしまった状態を指します。
こうなると、資金が動かせなくなるだけでなく、新たな投資機会を逃してしまい、資産形成の効率が下がる可能性もあります。



株価が下がった銘柄を放置してしまうと、「もう少し待てば回復するかも」という希望的観測が働きやすく、さらに状況が悪化してしまうことも珍しくありません。
特に、市場全体ではなくその会社特有の事情で株価が下落している場合、回復まで長期化する可能性が高いです。
そうなると、せっかく投資に回せる資金が滞り、他の銘柄に投資できるチャンスを逃してしまいます。
こうした状況を避けるためには、定期的に決算情報を確認し、業績が当初の想定と大きく乖離していないかをチェックする習慣が欠かせません。
自分が当初考えた投資の目的や戦略から大きくズレたら、勇気を出して「損切り」を行う判断も必要です。
長期運用をするにしても、完全に放置せず定期的なメンテナンスを意識するのが大切となるでしょう。
補足:株を長期的に放置した方がリターンを生む可能性が高いデータもある
株式投資における「放置」の有効性は、データと心理学的要因によって裏付けられています。
過去の市場データは、長期的な運用が短期売買よりも安定的なリターンを生む可能性が高いことを示しています。
例えば、ニッセイ基礎研究所の分析によると、積立投資で最終直残高で元本割れケースの場合では、投資期間10年と20年では以下のような差があります。
投資対象 | 投資期間10年の元本割れ | 投資期間20年の元本割れ |
---|---|---|
国内債券型 | 8.3% | 0.0% |
外国債券型 | 2.7% | 0.0% |
国内株式型 | 35.7% | 22.8% |
外国株式型 | 11.0% | 0.0% |
米国株式型 | 13.0% | 0.0% |
投資期間10年では、すべての投資対象(国内債券型、外国債券型、国内株式型、外国株式型、米国株式型)で元本割れするケースがありましたが、投資期間20年では、国内株式型を除いて元本割れするケースはなくなりました。



長期で運用をすると、株は放置が一番、と言えるかもしれません。
ただし、上記はあくまで長期投資の有用性を示すものであり、特定の銘柄について言及しているわけではありません。
筆者が放置をした4年9ヶ月の積立投資の成績を公開


筆者は2020年の7月ごろから、S&P500に毎月5万円を放置して運用をしています。
結果、トータルリターン「︎︎︎︎+194万円」と、大きなリターンを得ることができました。
運用期間中に相場の上下があったにもかかわらず、途中で売却や追加の調整をせずに完全に放置してこの結果を出せたのはよかったです。



現時点でいうと「株を放置して正解だった」と言えそうです。
ただし、今後10年、20年となった際にも同じことが言えるのかは、誰にもわからないと思います。
株の放置がもたらす3つのメリット


株を放置する投資方法には、多くのメリットがあります。
特に、長期運用ならではの複利効果や、株価の変動に振り回されない精神的な安定、そして貴重な時間を有効活用できる点が挙げられます。
以下で、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
- 長期運用がもたらす複利の効果があるから
- 株価の値動きに一喜一憂しなくていいから
- 時間の有効活用ができるから
長期運用がもたらす複利の効果があるから
株式投資において複利効果は、資産形成の最大の武器です。
複利とは、運用利益を再投資することで元本が拡大し、それに応じた利益がさらに生まれる仕組みのこと。
時間とともに大きくなり、長期保有を通じて最大化されます。



「投資は長期が前提」と言われるのは、複利の効果があるからなんですね。
たとえば以下のように、年間リターンが平均5%であれば、20年後には元本が約1.7倍になる計算です。


この恩恵を受けるためには、短期的な市場の変動に惑わされず、着実に保有し続ける忍耐力が必要になるでしょう。
株価の値動きに一喜一憂しなくていいから
株式市場は短期的な変動が激しく、頻繁に株価をチェックすることは心理的なストレスを引き起こします。



株式投資はパソコンに張り付いているイメージがありましたが、放置投資を知ってから、僕にとっては非常にありがたいです。
「放置」の最大のメリットは、こういったノイズから解放されることにあります。
日々の値動きに感情的な反応をすることが減り、冷静かつ合理的な投資判断が可能となるでしょう。
特に、忙しい生活の中で心の平穏を保ちながら資産を運用する方法として、「放置」は大いに役立つ戦略です。
僕らの人生は投資だけではありません。むしろ投資以外にもっと時間を使うべきと思います。
自分のやりたいことや大切な友人、家族のために豊かな時間を費やすことができる投資手法なのではないでしょうか。
時間の有効活用ができるから
投資を「放置」することで、頻繁な取引や情報収集に費やす時間を削減し、他の有意義な活動に時間を振り分けることができます。
例えば、自己成長のための学習やキャリアアップ、家族との時間を充実させることが可能です。
また、株価の変動を気にしないことで得られる精神的な余裕は、人生全体の満足度向上にも寄与します。
投資だけでなく、自分自身や家族との時間を大切にする選択として、「放置」は効率的で理にかなった方法です。
「仕事が忙しいけれど、放置で株を持っておきたい」といった方にはいいかもしれません。
もちろん、適当に投資をするのはNGですが。
株を放置する際の3つのデメリット


一方で、株を放置する際は以下の3つのデメリットが生じることを抑えておいてください。
- 塩漬けになるリスクがある
- 企業の状況変化に気づきにくい
- 利確確定のタイミングを逃す恐れがある
まず、放置を「完全な無視」と勘違いしないことが重要です。
適切にリスクを管理しながら、必要なタイミングで見直しを行うことで、資産の安全性を確保できます。
また、投資初心者の方は、以下の「やってはいけないこと」も確認しておくとなおよいでしょう。


塩漬けになるリスクがある
株を放置する一番のリスクは、「塩漬け」になることです。
「塩漬け」とは、買った株が値下がりして売るに売れず、そのまま長期間保有し続ける状態を指します。
この状態に陥ると、投資した資金が動かせなくなり、新しいチャンスに投資できません。
たとえば、株価1,000円で購入した銘柄が500円に下落した場合、半分の損を確定するのが嫌でつい放置してしまうこともあるでしょう。



しかし、その間に他の銘柄は上昇している可能性があります。
本来ならその資金で利益を得られたかもしれないため、機会損失につながるのです。
塩漬けを避けるためには、事前に損切りの基準を設けておき、「これ以上下がったら売却」とルールを決めておくことが効果的でしょう。
企業の状況変化に気づきにくい
株を放置する2つ目のデメリットは、企業の業績や経営状況の変化に気づけないことです。
株価は企業の業績や経営方針、業界全体の動きなどによって大きく左右されます。
そのため、定期的な確認を怠ると、気づかないうちに状況が悪化していることも少なくありません。
たとえば、
- 安定していた企業が突然業績を下方修正する
- 製品の不祥事が発覚する
などによって、株価は一気に下落する可能性があります。
こうした情報を放置している投資家は、気づいたときには大きな含み損を抱えているケースも珍しくありません。
完全に放置するのではなく、せめて年に数回は保有している企業の決算やニュースを確認しておくことが必要でしょう。
最低限のチェックでリスクを抑えることができます。
利確確定のタイミングを逃す恐れがある
3つ目のデメリットは、利益確定のベストタイミングを逃す恐れがある点です。
株価は常に上下を繰り返しながら推移するため、放置している間にせっかく出ていた利益が減少してしまう場合があります。
たとえば、購入した株が一時的に株価2倍に急上昇しても、「放置しているから」と気づかず、結果として株価が元の水準近くまで戻ってしまうことも珍しくありません。



株式投資で利益を最大化するには、「利確」のタイミングを見極めることが大切です。
完全に放置ではなく
- ある程度利益が出たら一部売却して利益を確保する
- 一定の水準まで上昇したら利益確定する
など自分なりのルールを決めておくと良いでしょう。適切なタイミングで利益を手元に残せば、投資成果も高まります。
株の放置に疑問を持つ方からのよくある質問


最後に株の放置に対する疑問を持つ方からのよくある質問をまとめました。
- 放置して損失が出たらどうすればいい?
- 放置中にリバランスを忘れても大丈夫?
放置して損失が出たらどうすればいい?
放置中に株価が下落し損失が出た場合、まずは慌てずに状況を冷静に分析することが重要です。
株価が下落する理由には、全体の市場の低迷や業績悪化などがあります。
業績が健全な企業の場合、短期的な下落は一時的なものと考えられるため、売却を急ぐ必要はありません。
しかし、企業の基盤が弱く将来性が乏しいと判断した場合は、損切りを検討することも必要です。
感情的な判断を避け、データに基づいた行動を心がけましょう。
放置中にリバランスを忘れても大丈夫?
リバランスを行わずに放置しすぎると、ポートフォリオが特定のセクターや銘柄に偏り、リスクが増大することがあります。
理想的には、年に1回程度のリバランスを行い、資産配分を適切に保つべきです。
ただし、長期投資では短期的な偏りが即座に問題になるわけではありません。
大切なのは、定期的に資産全体を見直す習慣を持ち、適切なタイミングで調整することです。
忘れてしまった場合は、気付いたタイミングで見直しを行えば遅くはありません。
まとめ
株を「放置」することは、長期的な視点で資産形成を行う有効な方法です。
しかし、放置投資は「完全に無関心」で良いわけではありません。
市場や業績の変化に注意を払い、半年に一度はポートフォリオを見直すなど、基本的なリスク管理が必要です。
また、信用取引では放置がリスクを増幅させるため避けるべきです。
本記事では、「放置投資が向いている人と向いていない人の特徴」や「放置に関するよくある質問」にもお答えしました。
投資を始める際は、自分の性格や資金状況に合わせた方法を選び、適切に放置を活用することが成功への第一歩です。