NISA(少額投資非課税制度)は、日本における資産形成において非常に重要な役割を果たしています。2024年1月からは新しいNISA制度がスタートし、より多くの人が投資を始めやすい環境が整いました。
現在の日本では、普通預金の金利が年0.001%と非常に低く、100万円を預けても年間の利息はたったの10円程度です。そのため、預金だけで資産を増やすのはほぼ不可能に近い状況。このような低金利環境下で資産を増やすためには、株式や投資信託への投資が欠かせません。
しかし、多くの人が「投資はリスクが高くて怖い」と感じています。そこで新NISAが大きな助けとなります。新しいNISA制度では、年間最大360万円、生涯投資枠は1,800万円までの投資で得た利益に対して無期限で税金がかからない仕組みとなりました。
これにより、投資初心者でもリスクを抑えながら投資を始めることができ、日本人全体の金融リテラシー向上にも寄与しています。
日本の金融環境とNISAの役割
日本では、1990年代以降、長期にわたって低金利政策が続いており、現在の普通預金金利は年0.001%程度です。この金利では、100万円を預けても年間の利息はわずか10円にしかなりません。一方で、インフレ率が年1%とすると、去年まで100万円で買えた商品やサービスが、今年は101万円必要になるということ。
つまり、100万円の購買力は実質的に99万円分になってしまいます。物価上昇分の方が大きく、お金の価値が目減りしていることになるんです。
このような状況下で資産を増やすためには、株式や債券、投資信託などへの投資が必要不可欠です。新NISA制度では、年間最大360万円までの投資で得た利益が無期限に非課税となります。
通常であれば、投資で得た利益には約20.315%の税金がかかりますが、新NISAを利用すればこの税金がゼロです。例えば、年間で20万円の利益が出た場合、通常なら約4万円の税金がかかりますが、新NISAを利用すればこの4万円を節約できます。
200万円の利益なら、約40万円の節税。この金額はバカにできないですよね?
日本人の貯蓄傾向と投資促進の必要性
日本人の金融資産の約50%は現金や預金で保有されていると言われ、これは欧米諸国と比較しても非常に高い割合です。例えば、アメリカでは現金・預金の割合は約13%に過ぎず、株式や投資信託などのリスク資産に多くの資金が投じられています。これが良い悪いではないですが、リターンを得るためにはリスク資産に資金を投じるのが大切です。
日本のような貯蓄偏重の傾向は、資産の増加を阻む要因になりやすいです。将来の老後資金や子供の教育費を確保するためには、資産運用による資産形成が不可欠です。
新NISA制度は、投資で得た利益が無期限に非課税になることで、これまで投資に消極的だった人々に投資の魅力を伝えています。例えば、NISA口座の開設数は2023年時点で約2,100万口座に達しており、多くの人が新NISAを通じて投資を始めています。
NISAは投資初心者に優しい制度設計
新NISA制度の最大のメリットは、年間最大360万円の投資で得た利益が無期限に非課税になることです。具体的には、成長投資枠で年間240万円、積立投資枠で年間120万円の投資が可能です。
通常、投資で得た利益には20.315%の税金が課せられますが、新NISAを利用することでこの税負担をゼロにできます。
例えば、年間で20万円の利益を得た場合、通常なら約4万円の税金を支払う必要があります。しかし、新NISA口座で運用していれば、この4万円をまるごと手元に残すことができます。
この非課税メリットにより、投資のリターンが高まり、リスクも相対的に軽減されます。これにより、投資初心者でも安心して資産形成を始めることができます。
少額から始められる利点
新NISA制度では、最低100円からでも投資を始められるのが大きな魅力です。多くの証券会社や金融機関では、投資信託を100円単位で購入できるサービスを提供しています。例えば、毎月1,000円からの積立投資を始めることで、大きな負担を感じることなく資産形成が可能。
少額から始めることで、投資に対する心理的なハードルを下げ、リスクを最小限に抑えながら投資経験を積むことができます。さらに、長期的な積立投資は「ドルコスト平均法」の効果により、購入価格を平均化し、リスクを分散することができます。
ただし、新NISAは非課税のメリットを享受できない場合がある
新NISAは確かに便利ですし、使わない手はありません。しかし、非課税のメリットを享受できない可能性があるのをご存知でしょうか。
例えば、以下のケースをご覧ください。
具体例1|NISA口座での損失
新NISA口座で100万円分の株式を購入しました。しかし、株価が下落し、売却時には80万円になりました。この場合、20万円の損失が発生します。
NISA口座は投資で得た利益が非課税になる制度です。しかし、損失が出た場合には税金が戻ってくるわけではありません。つまり、非課税のメリットを享受できないことになります。
具体例2|損益通算ができない場合
NISA口座での取引: 上記の通り、20万円の損失が発生。
一般(特定)口座での取引: 別の株式を売却し、20万円の利益が出ました。
通常のケース(一般口座同士)なら、一般口座での損失と利益は損益通算が可能です。つまり、20万円の利益から20万円の損失を差し引いて、課税対象の利益を0円にできます。この場合、税金はかかりません。
一方NISA口座の場合は、NISA口座での損失は損益通算の対象外です。そのため、一般口座での20万円の利益に対しては、約20.315%(約4万円)の税金がかかります。NISA口座での20万円の損失は、一般口座での利益約4万円の税金を減らすことに一切寄与しません。
一般口座では、損失が出た場合、その損失を他の利益と相殺して税負担を軽減できます。しかし、NISA口座での損失は税務上なかったことになります。
他の口座で利益が出ている場合、NISA口座での損失と相殺できないため、本来であれば減らせたはずの税金をそのまま支払うことになるのです。
実際、そこまで考えなくてOK
長期投資の観点から見ると、NISA口座での損失が他の口座の利益と損益通算できないデメリットは、それほど大きな心配事ではありません。
- 長期にわたって投資を続けることで、損失のリスクは大幅に低減される
- 非課税メリットが損失リスクを上回る
- 損失の影響は相対的に小さい
などがあるためです。損益通算を考えすぎて、投資自体ができなくなる方がリスクがあります。