「恩株」とは、株式投資初心者にも安心な、元手をゼロにして株を持ち続けることができる投資方法です。
株を購入し、その後の値上がり益や配当金を活用して元手を回収することで、残りの株は実質無料で保有できます。この仕組みにより、リスクを抑えながら長期的な資産形成が可能になります。
本記事では、恩株の基本的な仕組みを初心者向けにわかりやすく解説します。メリットやデメリット、具体的な作り方のステップ、さらには注意点まで詳しく紹介。
「損をしない投資」を実現するための第一歩として、恩株の魅力を知ってみませんか?
恩株(おんかぶ)とは
恩株(おんかぶ)とは、株を購入した際の費用を売却益などで回収し、元手ゼロで保有できる状態の株のことです。
例えば、100株を買った後にその株価が上昇し、50株を売却した利益が元の投資額と同額になった場合、残りの50株は「恩株」と呼ばれます。
- 購入価格
- 1株1,000円
- 100株の購入で、100,000円
- 株価上昇後の価格
- 1株2,000円
- 100株の購入なので、200,000円
- 上昇後の株を50株売却する
- 1株2,000円×50=100,000円
- 元手の資金を回収できる
- 残った50株が恩株となる
この恩株の魅力は、元手を回収しているため、値下がりしても金銭的な損失が出ない点にあります。また、配当金を得たり、将来の値上がり益を狙ったりすることもできます。
恩株は初心者でも取り組みやすい投資手法の一つであり、「まずは損をしない投資をしたい」という方にぴったりの考え方です。
三菱商事が恩株になりました
三菱商事の平均取得単価1,121円に対して、2024年12月12日の株価では2,573円です。
つまり、ここで僕が保有株数の半分(約73株)を利確すれば、残りの73株は恩株になるということ。ただし、特定口座で取引を行なっているため、20%の税金が取られてしまいます。
また、今日で思うのは「結果として恩株だった」に過ぎず、恩株を期待して運用するのは非常に難しく思います。投資はあくまで長期が大前提と思っているので、あまり期待しすぎず、長い目で見守っていくのがいいかもしれません。
恩株のメリット
以下に恩株のメリットをまとめました。投資において冷静な判断ができるかどうかは非常に大切なので、精神面としてもプラスになるでしょう。
- 心が楽になる
- 株価が0円になっても損をしない
- 冷静な投資判断ができる
- 配当金による長期的利益を得られる
心が楽になる
恩株を持つことで、株式投資に対する不安や緊張感を大幅に減らすことができます。
通常、株価が下がると「損をしたくない」という気持ちから焦りやストレスを感じるものですが、恩株の場合、すでに元手を回収しているため「損をしない」という安心感が残ります。
この心理的な余裕は非常に重要で、投資初心者にとっては、値動きに左右されずに冷静な判断をする大きな助けになります。
また、「損をしない」という安心感があることで、投資を楽しむ気持ちも生まれやすくなります。
株価が0円になっても損をしない
恩株の大きなメリットの一つは、仮に株価が0円になったとしても損失が出ないこと。これは、元手をすでに回収しているからこそ成り立つ特徴です。
普通の株式投資では株価が大きく下がると損失を抱えるリスクがありますが、恩株なら「下がったとしても元手が戻っているから問題ない」と考えることができます。
このため、初心者が投資に慣れるための「失敗しても安心な体験」として恩株を活用するのも良いでしょう。
特に投資に対して不安がある方には、このリスクの少なさが大きな魅力です。
冷静な投資判断ができる
恩株を持つことで、投資の判断を冷静に行えるようになります。
元手が回収されているため、値動きに対して感情的になることが少なくなり、より客観的な視点で投資を考えられるようになるのです。
例えば、恩株を持っていれば、
- この銘柄をもっと増やすべきか
- 配当金を再投資に回すべきか
といった判断を長期的な視点で落ち着いて検討できます。
一方で、恩株でない場合は、損失を回避するために焦って売却してしまうことも。
恩株化することで、損失が出た際の焦りや迷いを減らし、合理的な投資判断を下せるようになるのです。
配当金による長期的利益を得られる
恩株を保有し続けることで、配当金による長期的な利益を得ることが可能です。
たとえば、恩株になった株式を保有していると、企業からの配当金が定期的に受け取れます(配当金を配っている企業に限る)。
この配当金を生活費に活用したり、再投資に回してさらなる資産形成を目指したりできます。
また、配当金を出す企業が増配を行えば、受け取る金額が年々増える可能性もあります。
35期連続増配企業である花王の最初の配当金は「1株7.1円」でした。今や、1株配当「152円」。21倍に成長しました。
恩株の配当金は元手を回収しているため「純粋な利益」となり、初心者でも無理なく資産形成を続けることができるのが魅力です。
恩株のデメリット
一方で、恩株のデメリットはどうでしょうか。パッと考えるとなかなか思いつかないかもしれませんが、経験ベースで言うと先ほどお伝えした三菱商事の恩株事例の通り、時間がかかるということ。
他にも、以下にまとめました。
- 株価が2倍になるまで待つ必要がある
- 「恩株」という理由で漠然と保有し続けてしまう
株価が2倍になるまで待つ必要がある
恩株を作るためには、購入時の株価が少なくとも2倍以上に上昇する必要があります。
しかし、この条件を達成するには時間がかかることが多く、場合によっては長期間待つ必要がある点がデメリットです。
特に成熟した企業(通信、銀行など)や景気に大きく左右される業種では、株価が急成長する見込みが低く、恩株化までに数年を要することも。その間に市場環境が悪化したり、他の投資機会を逃したりする可能性もあるでしょう。
また、株価が急上昇するタイミングを逃すと、売却のチャンスを失い、恩株化そのものが難しくなることもあります。短期的な利益を求める投資家にとって、この「待つリスク」は大きな課題です。
一方で、僕のようなバイ&ホールドの投資家には、あまり気にしなくて良いデメリットになります。
「恩株」という理由で漠然と保有し続けてしまう
恩株は心理的な負担が軽減される反面、「恩株だから損はない」と安易に保有し続けるリスクがあります。
たとえ恩株化していても、企業の業績悪化や市場全体のトレンド変化により、その株式が将来的に利益を生まなくなる可能性があります。
例えば、競合他社の台頭や業界構造の変化によって、株価が下がり続ける場合もあります。このような状況下で見直しを怠ると、機会損失だけでなくポートフォリオ全体の成長を妨げることになります。
恩株は「損をしない」状態ではありますが、投資の目的はあくまで資産を増やすこと。
目的を見失わず、定期的に状況を確認する習慣が重要です。
恩株を保有する注意点
恩株を保有する際は、以下2点に注意してください。
- 売却タイミングを見極める必要がある
- 恩株になっても定期的に業績チェックする
売却タイミングを見極める必要がある
恩株は損失リスクを回避できるメリットがありますが、利益を最大化するためには売却タイミングが非常に重要です。
恩株になったからといって放置すると、株価が再び下落してしまい、さらなる利益を得る機会を失う可能性があります。一方で、早まって売却してしまうと、その後の値上がり益を逃してしまうこともあります。
特に市場の急変動が予想される際には、計画的に売却基準を設定しておくことが必要です。
また、売却後の資金をどのように再投資するかも考慮し、投資全体の戦略を立てることが大切です。恩株だからといって過信せず、慎重な判断が求められます。
恩株になっても定期的に業績チェックする
恩株は一度作った後も、企業の業績や市場環境を定期的にチェックする必要があります。
恩株化した株は「損をしない」状態ではありますが、配当金が減少したり、企業の成長が停滞したりする場合には、その保有意義が薄れることがあります。
例えば、業界全体の収益性が低下していたり、新たな競争が激化していたりする場合、恩株であっても売却を検討すべきです。
また、企業が増配を行う可能性がある場合には、保有を続けるメリットも増します。
このように、恩株であっても「現状維持」ではなく、適切な判断を下すための情報収集が重要です。恩株を単なる安心材料と捉えるのではなく、将来に向けての戦略的な選択肢として活用しましょう。
恩株にする3つの方法
恩株にする方法を3つまとめました。
- 値上がり益による恩株化
- 配当金による恩株化
- 値上がり益と配当金の組み合わせによる恩株化
値上がり益による恩株化
恩株を作る基本的な方法は、株の値上がり益を活用することです。
例えば、100株を購入して株価が2倍に上がった場合、50株を売却することで、初期投資額を回収できます。残った50株は「恩株」として保有し続けられるのです。
この方法は、成長性の高い企業の株や将来性のある業界の銘柄を選ぶのがポイントです。
ただし、株価が上がるまでには時間がかかることがあるため、短期的な利益を求める場合には向きません。
値上がり益を狙う場合は、購入時に目標株価を決めておくことで、計画的な運用ができます。
配当金による恩株化
配当金を活用することで恩株を作ることも可能です。
配当金とは、企業が利益の一部を株主に分配するお金のことで、保有しているだけで受け取ることができます。この配当金をコツコツと積み重ねて、最終的に購入した株の元手を回収するという方法です。
例えば、年間5%の配当利回りがある株式であれば、約20年で初期投資額を回収できます(5%×20年=100%)。この方法は、値動きの大きい株ではなく、安定した配当を出している企業の株式に向いています。
長期的に資産を増やしたい人や、リスクを抑えた投資をしたい初心者におすすめです。
値上がり益と配当金の組み合わせによる恩株化
値上がり益と配当金を組み合わせることで、より効率よく恩株を作る方法もあります。
例えば、株価がある程度上昇した段階で一部を売却して元手の一部を回収し、残りの部分は配当金を活用してさらに元手を回収するというやり方です。以下をご覧ください。
投資シナリオ
- 初期投資:100万円(1株1,000円の株式を1,000株)
- 配当利回り:3%(1株あたり年間30円)
- 株価が1.5倍(1,500円)に上昇した場合
回収プロセス
- 株価上昇時の売却:700株を1,500円で売却
- 回収金額:105万円(元本以上を回収)
- 残り保有:300株
- 残存株式からの配当収入
- 年間配当金:9,000円(30円×300株)
- 配当金の再投資により新たな株式を購入可能
この方法のメリットは、短期的な値上がり益と長期的な配当収入の両方を得られる点です。
成長性のある企業で、かつ配当利回りも期待できる銘柄を選ぶことで、この方法は効果を発揮します。
投資を始めたばかりでも、「値上がり益」と「配当金」という2つの利益源を活用することで、安全かつ効率的に恩株化を目指せるでしょう。
まとめ
恩株は、投資のリスクを減らしながら利益を長く得られる方法です。
「値上がり益」「配当金」「値上がり益と配当金の組み合わせ」という3つの方法を自分の投資スタイルに合わせて選ぶことができます。値上がり益は短期的に利益を狙うのに向いており、配当金は長期的な安定収入に役立ちます。
また、2つを組み合わせる方法はバランスが良く、多くの人に適しています。
ただし、恩株を目指すには時間がかかる場合もあり、株価や業績を定期的にチェックすることが重要です。
恩株の良さは「安心感」と「将来の可能性」です。賢く活用して、安定した資産形成を目指してみてください。